ビザ申請サービスホームページ > 外国人研修・実習制度の変更について

外国人研修・実習制度の変更について

1.外国人研修制度と問題点

 外国人研修制度とは、18歳以上の外国人を日本に受入れ、日本での産業上の技術や技能、それに知識などを習得させ、本国で活用してもらうことにより人材育成を通して国際貢献を行うための制度です。日本が経済発展の波に乗った1960年代にその基礎が出来上がり、当時は多くの日本企業が海外進出を果たしたため、世界中に日本企業との合弁会社や現地法人が設立され、業務を円滑に行うためにも現地で雇用された外国人社員の研修が大きな課題となっていました。中でも微妙な技術を必要とする製造業では、現地で雇用した従業員を日本に招へいして必要な知識・技術・技能を直接教える必要があり、多くの企業の要望からこの制度が発足しました。当時は企業単独での受入のみでしたが、その後の1990年に行われた改正により組合を通じての受入れが可能となり、93年にはより実践的な技術や技能を習得させるために、受入機関との雇用関係の下に成立する技能実習制度が実施されるようになりました。現在では「研修」の新規入国者数は10万人を超えて技能実習への移行者数も6万人を超えています。

 このように多くの企業に利用されている研修制度ですが、主に団体監理型の研修生受入れを通して様々な問題点が顕在化するようになりました。

 第一に、研修生・技能実習生を実質的な低賃金労働者として扱うケースが頻繁に見られるようになりました。受け入れ企業の中には研修生や技能実習生を多く受け入れることにより、日本人社員の採用を少なくして人件費を削減しようとする例もみられ、これは研修の目的を完全に見失っているだけでなく、健全な日本の労働市場の発展にも悪影響を与えています。さらには長期間の単純労働に従事させるために、事前に計画した研修計画を無視して研修生や技能実習生が習得を希望していた研修を全く行なわないケースも見られます。この他にも早朝から深夜にまで及ぶ長時間労働など、劣悪な環境での労働に従事させるなどの事例があげられます。

 次に問題となるのが、研修制度をよく理解していない受入れ団体の存在です。本来であれば研修生受入れの母体となる監理団体が研修制度を理解した上で、実際に研修生や技能実習生を受け入れる実習実施機関などに指導・監督を行うことになっています。ところが、一部の団体では営利目的などで研修生の派遣にのみ力を入れる余り、実習実施機関で賃金の未払いやセクシャルハラスメントなどの問題が起きていたとしても全く気がつかないことも多々あります。さらに悪質な場合には、実習実施機関での不当な扱いを相談にきた研修生を本国に送り返してしまったり、実習実施機関と結託して研修生を騙して著しく劣った条件での労働に従事させる例もみられます。

 最後に、不当な利益を得て研修生をあっせんする悪質な送出し機関やブローカーの存在が挙げられます。海外で外国人研修生を募集する際に、本来の研修の趣旨とは違う“日本での出稼ぎ”などと説明して募集を行ったり、日本までの渡航費や仕事紹介料などの名目で研修の参加者やその家族から金銭を徴収する例が見られます。研修生の中には高額な紹介料を支払うことができず、日本に入国してからも借金返済のために不法就労に手を出さざるを得なくなり、犯罪等に発展することもあります。

  このような問題点を改善し、研修生や技能実習生の法的保護や法的地位の安定化を図るためにも、平成21年7月に「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」が公布されました。これに伴い研修生の人権や権利を守り、受入団体の監督を一層厳しくした研修制度が平成22年7月1日から施行されることとなりました。

2.雇用契約の締結

 実務研修を伴う場合、1年目からの雇用契約の締結が義務づけられました。これにより技能実習生にも一般の日本人従業者と同等に、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償制保険法、雇用保険法、健康保険法、国民健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法などの諸法令が明確に適用されることになります。

 そのため、技能実習生に対して労働条件の明示義務がなど発生し、時間外労働や休日労働を行わせる場合には労働基準法に定める割増賃金の支払いだけではなく、労使協定(36協定)の締結も必要となります。特に賃金の支払いについては上陸基準省令で「報酬が日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること」と定められているため、不当な低賃金などは認められません。技能実習生の時間外労働は、「技能などの修得活動の一環として実施される必要があり、技能実習生に対する指導が可能な体制が構築されている。」などの条件付きではありますが、原則として認められます。

 ただし、これについても当然に時間外・休日労働として所定の割増賃金の支払いなどが必要となります。さらに、賃金から食費や寮費などを控除する場合にも労使協定の締結が必要となり、受入企業などが負担すべき費用などを「管理費」などの名目で技能実習生の賃金から不当に控除することはもちろんできません。

 また、監理団体や実習実施機関は、技能等の修得活動を開始する前に労働者災害補償保険法による労働者災害補償保険に係る保険関係の成立の届出をすることが義務付けられています。暫定任意適用事業に該当する場合を除き労働者災害補償保険への加入が強制適用されるため、原則としてその事業が開始された日から10日以内に労働基準監督署に成立届を提出する必要があります。仮に暫定任意適用事業に該当するために労災保険への加入申請をしていなかった場合でも、技能実習生を受け入れる場合には、実習実施機関などは労働者災害補償保険やこれに類する他の保険に加入するなどの保障措置を講じる必要があります。

3.在留資格「技能実習」の創設

 新たな在留資格「技能実習」が創設されました。従来、実務研修を含む研修の場合には1年目は在留資格「研修」で、2・3年目は「特定活動」で在留していましたが、改正に伴い1年目から技能実習生と雇用契約を締結した上で、在留資格「技能実習」で在留することになります。

 一方、実務研修を伴わない非実務のみの研修や国の機関などが実施する公的研修は従来通りの在留資格「研修」で在留することになります。

 在留資格「技能実習」は、外国人研修生の受入形体による区別として企業単独型(イ)と団体管理型(ロ)に区別されます。

外国人研修生の受入形体による区別
①企業単独型(イ)
海外にある合弁企業など事業場の関係を有する企業の社員を受け入れて行う活動
②団体管理型(ロ)
商工会などの営利を目的としない団体の責任および管理の下で行う活動

さらに研修内容により技能実習1号と2号に区別されます。

研修内容による区分
①技能実習1号
「講習による知識習得活動」および「雇用契約に基づく技能などの修得活動」
②技能実習2号
「技能実習1号の活動に従事する、技能等を修得した者が当該技能等に習熟するため、雇用契約に基づく修得した技能等を要する業務に従事する活動

 このように、在留資格「技能実習」は、“技能実習1号(イ)”“技能実習1号(ロ)”、さらに“技能実習2号(イ)”“技能実習2号(ロ)”の4種類に分類されることになり、それぞれに異なった条件などが設けられることになります。

新制度における研修制度

●非実務のみの研修・・・在留資格「研修」

●実務研修を伴う研修・・・在留資格「技能実習」

 

企業単独型受入れ(イ)

団体監理型受入れ(ロ)

技能実習
1号

技能実習1号(イ)
・企業が単独で受入れ
・入国1年目
・「講習による知識習得活動」および「雇用契約に基づく技能などの修得活動」の実施
※従来の研修制度における1年目「研修」
(実務と非実務による研修)のイメージ

技能実習1号(ロ)
・監理団体が受入れ、実習実施機関が実務研修を実行
・入国1年目
・「講習による知識習得活動」および「雇用契約に基づく技能などの修得活動」の実施
※従来の研修制度における1年目「研修」
(実務と非実務による研修)のイメージ

技能実習
2号

技能実習2号(イ)
・企業が単独で受入れ
・入国2・3年目
・「雇用契約に基づく修得した技能等を要する業務に従事する活動」の実施
※従来の研修制度における2・3年目の「特定活動」
(技能実習)のイメージ

技能実習2号(ロ)
・監理団体が受入れ、実習実施機関が実務研修を実行
・入国2・3年目
・「雇用契約に基づく修得した技能等を要する業務に従事する活動」の実施
※従来の研修制度における2・3年目の「特定活動」
(技能実習)のイメージ

 詳細はそれぞれ異なりますが、従来の研修制度と比較した場合の大まかなイメージとしては、技能実習1号が従来の研修制度でいう1年目に該当する実務と非実務による「研修」で、技能実習2号が2・3年目に「特定活動」で滞在する技能実習に該当するものと言えます。そのため、実務研修を伴う研修の場合には、技能実習生が来日して1年目は技能実習1号の規定に準ずることとなり、2・3年目に移行する場合には技能実習2号へと移行することとなります。2号へ移行できる職種は、2010年4月現在で66職種123作業が定められており、技能実習1号の終了時に技能検定基礎2級等の検定試験に合格する必要があります。ちなみに、技能実習1号には職種による制限は設けられていません。

4.職業紹介事業の適用

 厚生労働大臣告示の「技能実習制度推進事業運営基本方針」によれば、従来から事業協同組合などが海外の送出し機関から研修生を受け入れる場合には、監理団体である組合などが職業安定法上の職業紹介事業の許可や届出を行うことが必要とされていました。

 しかし、多くの組合は職業紹介事業の許可や届出を行わないことが多く問題となっていました。そのため、今回の入管法の改正により、実務を伴う研修の場合には実習実施機関と雇用契約を締結した上で実習を行うこととなり、原則として職業紹介行為に該当することが明確になりました。そのため、団体管理型で研修生を受け入れる団体は、職業安定法に基づく職業紹介事業者の許可又は届出が必要となります。

 職業紹介には無料職業紹介事業(許可または届出)と有料職業紹介事業(許可制)の2種類があります。受入団体が無料職業紹介事業を行う場合には、名目の如何を問わずに実費を含めた一切の手数料は徴収できないことになります。職業紹介に要する費用としては、職業紹介事業に従事する監理団体の職員や役員の報酬、技能実習生の選抜に必要となる監理団体職員の送出し国への渡航費、送出し団体が行う職業紹介事業に対する費用、採用面接等に必要となる会場費などがあり、これらの費用を実習実施機関から徴収する場合には、原則として有料職業紹介の許可が必要となります。

 そのため、職業紹介に係る費用と技能実習生の監理に係る費用を明確に区分けする必要があります。このように研修生を受け入れる監理団体が職業紹介事業の許可や届出を行うことにより、結果として入管法と職業安定法の両面から技能実習生の法的保護と安定化を図ることになります。

5.外部講師による講習の実施

 団体監理型でも企業単独型でも、技能実習生に対する一定時間以上の講習の実施が義務付けられています。これは技能実習生が日常生活を円滑に送ることができるようにし、実習を効果的かつ安全に行うようするための措置です。

 この講習は、語学力を考慮するなどして技能実習生が良く理解できる内容にしなければならず、「日本語」、「日本での生活一般に関する知識」、「技能実習生の法的保護に必要な情報」及び「日本での円滑な技能等の修得に資する知識」というように、その講義内容が上陸基準省令で定められています。このうちの「技能実習生の法的保護に必要な情報」には、入管法や労働関係法令に関する事項、外国人の技能実習における不正行為が行われていることを知ったときの対応方法などの講義が含まれていなければなりません。

 さらに、この講習は国や地方公共団体の職員、弁護士、社会保険労務士、行政書士などの専門的な知識を持つ外部講師が行うものでなければ、上陸基準省令に定める講習の時間数としては認められません。

  また、講習には商品生産施設の見学は含まれますが、機械操作教育や安全衛生教育は「技能等の修得のための活動」として雇用契約の締結後に実施しなければなりません。団体監理型での受入の場合には、講習の期間中は技能実習生と実習を行う機関との間に雇用関係は生じていません。そのため、実習を行う機関は技能実習生に対して指揮命令を行うことは認められず、「技能などの修得をするための活動」は講習期間中には行うことができません。

 一方、企業単独型での受入の場合には、転勤や出向で雇用契約に基づいている場合と、出張で雇用契約に基づいてない場合があるため、実習内容をよく考慮して実施しなければなりません。いずれにせよ、雇用契約を締結していない講習期間中に「技能などの修得をするための活動」が行われた場合には、不正行為やそれに準ずる行為に認定される恐れがあります。

6.研修制度改正の主な目的

 今回の改正の主な目的は、従来の研修制度が抱える3つの問題点の改善であり、これらの対策を中心に様々な改正がなされています。

 問題点(1)「一部の受入企業では、研修生・技能実習生が実質的に低賃金労働者として扱われている」
改善
①技能などの修得活動に雇用契約を義務付け、労働基準法、最低賃金法などを適用させる
②実習を行う機関に対して監理団体による一定期間の講習実施を義務付ける
③行政書士や社会保険労務士による外部講師により、技能実習生の法的保護に必要となる情報の講義を義務付ける
④技能などの修得活動実施前に、労働者災害補償保険への加入を義務付ける
⑤監理団体による技能実習生のための相談体制を構築する
⑥実習実施機関での技能実習が継続できなくなった場合には、監理団体が新たな受入れ先を確保するように努力すること
⑦実習実施機関での労働条件を技能実習生が理解したことを証する文書を入国審査の際に提出すること

問題点(2)「受入れ企業に対する指導・監督が不十分な受入れ団体が存在する。」

改善
①3か月に1回以上の割合で監理団体の役員が技能実習の監査を実施し、その結果を地方入国管理局へ報告する
②行おうとする技能実習について一定の知識をもち適正な計画を立てることができる役職員が技能実習の計画をたてること
③1か月に1回以上の割合で監理団体の役職員が実習実施機関を訪問し、技能実習の実施状況の確認を行い指導をする

問題点(3)「不当な利益を得て技能実習生をあっせんする悪質な送出し機関やブローカーが存在する」

改善
①不正な研修・技能実習活動のあっせんなどを行った外国人を退去強制することができるようにする
②送出し機関などが保証金などの名目で金銭を徴収しないようにする。また、労働契約の不履行に係る違約金を定める契約などを実施させないようにする
③技能実習に関係する機関相互の間でも、技能実習に関連して労働契約の不履行に係る違約金を定める契約などを実施させないようにする
④不適正な取り決めがないか確認するために、技能実習生との契約書などを入港審査の際に提出させる
⑤監理団体の管理費用を技能実習生に負担させない。また、管理団体が実習実施機関から費用を徴収する場合には金額と利用目的を明示させる

 この他にも、過去に不正を行った研修実施機関や管理団体に対しての欠格要件の強化など、研修生・技能実習生を保護し、適正な研修を実施するための多くの改正が行われています。今後も研修制度を利用する企業には、今まで以上にコンプライアンスを遵守した適正な受入れ体制を築くことが要求されています。

ビザ申請無料相談
行政書士法人ACROSEED
Copyright(C)2009 ACROSEED Co.LTD, AllRights Reserved.
>